クロマツ 【別名】オマツ/オトコマツ  (マツ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1. 特徴

1)クロマツの特徴
本州、四国、九州のトカラ列島まで、主として海岸近くに分布している。
少なくとも一万年以上も前から日本の風土になじんできた樹木。
樹高は40m、直径は2m、各地に巨木、名木が残されており、民話や伝説に彩られている。
樹皮は灰黒色、老木になると亀甲状に厚く割れてくる。
若い間はすくすくと伸びるが、一定の樹齢になると枝が垂れていわゆる高砂の松のような整然とした樹形をつくる。
4〜5月に新しく伸びた枝(みどり)の先端に紫色の小豆大の花(雌花)がつく。みそりの下に淡黄色の雄花が無数につき、黄色い花粉を飛散させる。
雄花は受精後、松かさになりそのまま年を越して翌年の10月に熟し、開いて種子を飛散させる。
古いかさかさに乾いた松かさをつけている庭のマツは、2年間手入れしなかった事を示す。葉も2年間はついており、3年目に落葉する。
陽樹で日当りのよい場所を好み、乾燥にも強く砂質土壌のところでよく生育する。潮風に強いので海岸の砂防林としてよく植えられている。大気汚染などの公害にもアカマツより強いので公園や高速道路の法面、学校、神社仏閣などの各所に植えられている。庭木としては3〜4mくらいに仕立てられたものが好まれるが、人工的に形づくられたものなので、毎年手入れを行い一定の樹形を保たないと形が崩れてしまう。
マツ類には葉の数が2枚のもの、3枚のもの、5枚のものがあり、クロマツ、アカマツは2枚の葉を持ち、ゴヨウマツは5枚、外国産のものは3枚のはを持つ。

クロマツ アカマツ
硬くて濃みどり色 柔らかく薄みどり色
みどり 白毛で覆われる 褐色毛で覆われる
短枝 夏によく出る 出にくい
松かさ 灰白色 赤褐色
樹肌 黒褐色 赤褐色、薄く剥げる
成長 早い クロマツより遅い
花期 アカマツより遅い クロマツより早い
適地 深根性で海岸砂地 浅根性で山頂のやせ地

2.用途と配植

公園樹や海岸の風致林として幅広く利用されている。
庭園の眺めの中心となる正真木には、マツを使うことが多く、その他、流枝松、門冠りなど、樹形によってそれぞれ植え場所を選ぶ。

屋敷林として防風垣にする地方もあり、丈を低くして生垣として使うこともできる。
配植はカエデ、ウメ、モチノキ、モッコク、ツバキ、サザンカ、オオムラサキ、ドウダンツツジ、イヌツゲ、ニシキギなどがよく、常緑樹中心の庭になる。

 

3. 手入れのポイント
1)植え付け
11月から5月頃まで植えられるが、適期は3月〜5月。穴を大きめに
掘り、根鉢を入れて形の良い方を正面に回して位置を決める。(立て入

れ)、その後土を埋め戻して水は使わず突き棒でよく突き固める土極め で植える。マツ類やナンテンは水を使わないこの方法(土極め)で植える。

2)剪定・整枝
①みどり摘み
5月中旬頃に新芽を指先で摘み取る作業を「みどり摘み」といい、マツの手入れには欠かせない作業になる。摘み取る長さは、その枝をどのくらい伸ばすかによって変わる。枝を伸ばしたい時は1〜2本を残し、つまった枝先にしたい場合は全て摘んでしまい、後から伸びる夏芽を枝として使う。
みどりは一箇所から5、6本が車輪状に出るので、多い時は元から摘み取って数を減らす。そのまま伸ばすときは摘まないで残すとか、樹形を考えて摘み取るようにする。樹の勢いが良すぎるときは、みどりを早めに元から全部摘み取ると二番みどりが伸びてくるのでこれを育てる。みどりの下方には葉がつかないのでそこまで摘んではいけない。みどり摘みを省略する場合は、秋のもみ上げを怠らずに行う。

②もみ上げ
手入れをせずに放っておいた場合は樹形が崩れるので11月から3月頃までの間に、込みすぎた枝や枯れ枝を間引きして形を整えることが必要。間引きなどで形が整ったら一本一本の枝についている葉をむしり取る。この作業を「もみ上げ」といい、重要な手入れの一つになる。

もみ上げは枝の下方についている葉を引っ張るようにしてむしり取る。一枝に20〜30枚の葉を残し古い葉や古い松かさなども取り除く。枝が間延びしてしまう場合は、途中に葉を残しておくと翌年の夏にそこから芽を出して新しい枝を出させることができる。クロマツはアカマツより萌芽力が強いので、葉さえ残しておけば枝を切り戻しても新芽が出て樹形を整えやすい。
③誘引
若木のうちは思うように枝が出ないので、曲げたい方向に竹とシュロ縄で誘引して樹形を整える。誘引は樹液の流動している春に行う。
3)病害虫
病害には葉さび病、すす病、こぶ病などがある。葉さび病は初秋の頃にでるので、ジネブ水和剤を2回/月程度散布する。こぶ病は、枝がこぶ状に腫れるもので、大きくなると風で折れやすくなる。患部を切り取って焼き捨てるが、大切な枝の場合は残してもよい。
害虫にはアブラムシ類、マツケムシ、マツクイムシなどがある。アブラムシ類は春先に葉に薄緑色のムシがびっしりとつくため、スミチオン乳剤を散布する。マツケムシ(マツカレハ)は5月〜6月に発生し、葉を食害するので、スミチオン粉剤を散布する。マツケムシの幼虫は樹上にいて冬には地上に降りて越冬する性質があるので10月〜11月頃に地上1.5mの所にコモを巻きつけて潜伏させ越冬した幼虫を2月ころに集めて処分する。マツクイムシが庭木に入った場合はあまり効果的な対処方法がない。
4)施肥
衰弱した老樹には、冬季に鶏ふんを与えるとよく伸びて仕立てやすくなるが、一定の樹形ができたものはかえって形が崩れるので施肥は不要。
春のみどりが伸びない場合は衰弱しているので4月ころにメネデールのような活力剤や液肥を与える。
4.ふやし方と入手のポイント
1)繁殖
実生または接ぎ木でふやすのが一般的であるが、庭木は樹形を整えるために10〜20年以上かかってしまう。
2)入手のポイント
山採りから仕立てたものは安価であるが、鉢の中に細根が出ていないものは活着が悪い。

 

アカマツ 【別名】メマツ/オンナマツ  (マツ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木

1.特徴
1)本州、四国、九州、屋久島まで分布しており、北海道南部から中部まで植えられているが、寒地では樹齢が短くなる。樹皮が赤褐色なのでアカマツというが、老木になると下部が亀甲状に割れ樹皮は薄くはげてくる。庭木のアカマツは幹をタワシでこすって樹皮を取り、新鮮な赤味を出させる。樹高は20m〜30mになる。
葉は針状で細長く、クロマツよりしなやかなためメマツ、オンナマツと呼ばれる。開花習性はクロマツと同じだが開花時期はアカマツの方が早くみどりもしなやか。陽樹で成長は早く、乾燥に特に強い性質があり、山の山頂や、崖地などの痩せた乾燥気味の場所に好んで生育している。潮害には弱く大気汚染にも抵抗力がないので都市部では少なくなっている。庭木としても移植が難しいのであまり使われなくなっているが、樹形が優美で幹肌が美しく、庭木としては大変優れたものであり、古い庭園には名木が残っている。樹形は老木になると樹冠が扁平になり日光をたくさん受けるように変形してくる。
2)アカマツの仲間と特徴
①アイグロマツ
アカマツとクロマツの中間的性質を持ったもの。大気汚染にも抵抗力はある方で、潮害にも耐える。
②ジャノメアカマツ
葉の下部に黄白色の斑が入るものをいう。他に、葉の先端に白斑のでるツマジロアカマツもある。
2.用途と配植
アカマツは日本の自然景観を形成する主木で、マツタケ山はこのアカマツ林のこと。配植はクロマツに準じる。
3.手入れのポイント
1)植え付け
時期、方法ともクロマツに準じるが、やや高植えにして水はけをよくする。
2)剪定・整枝
時期、方法ともクロマツに準じるが、クロマツより性質が弱いのでみどり摘みもあまり強く行わない。
もみ上げや枝透かしもやや弱く行う。枝を透かす場合は葉群にまんべんなく日の当たるように行う。葉をもみ上げる場合は、なよなよした感じを出すために垂れ葉を残してもかまわない。萌芽力が弱いので枝を切り戻すことは避け、分岐点で切り透かす。
3)病害虫
クロマツに準じる。
4.ふやし方と入手のポイント
アカマツは実生、変種などは接ぎ木でふやす。台木はクロマツよりアカマツの方が優良品。アカマツは移植が難しいので、根鉢の優良ななものを選ぶ。

ゴヨウマツ 【別名】ヒメコマツ  (マツ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木

1.特徴
1)ゴヨウマツの特徴
日本の南部から北部にかけて自生し、葉は一箇所から5本出ており、上面は深緑色、下面は灰白色で葉群に厚みがあり庭木として優れている。樹皮は黒灰色で、老木になると小さなうろこ状になってはげ落ちる。
2)ゴヨウマツの仲間と特徴
①キタゴヨウマツ
本州中部以北から北海道南部にかけて自生する北方型のもの。種子の翼が長く、葉もヒメコマツより長くて硬い感じが特徴。庭園樹として広く用いられている。
②チョウセンゴヨウ【別名】チョウセンマツ
朝鮮、旧満州、シベリア東部に自生。日本でも長野、山梨、群馬、栃木など中部の山地にみられる。ゴヨウマツの類では最も大型の葉を持ち、8〜15cmになる。松かさも大型で種子は食用になる。庭木としても用いられるが大味でゴヨウマツより劣る。
③ヤクタネゴヨウ
九州屋久島、種子島の一部にだけ自生するもので、葉は5〜7cm、青みがかった緑色でチョウセンゴヨウに近い種類。栽培品はほとんど無い。
④その他
ジャノメゴヨウ、フイリゴヨウなどの斑入り種があり、矮性種のネギシゴヨウなどもある。
2.用途と配植
クロマツやアカマツなどと同じだが、仕立てたものは庭園樹に使われる。和風庭園の真木、流枝、門冠には最も適している。幹が直立し、丈が高くなるので、植え込みの混植にもよい。日当たりの良い場所を好むが耐陰性もあり、潮風にも抵抗力があるのでマツ類では適応性が広い方である。
配植はクロマツに準じる。直立した幹のものは洋風庭園でヒマラヤスギ、ダイオウショウなどと混植してもよく似合う。ハナミズキ、シモクレン、アベリア、カルミナなどの花木をあしらうと洒落た洋風庭園の感じが出せる。
3.手入れのポイント
1)植え付け
新芽の動き始める少し前が適期であるが、根回しをして畑に養生しておるものなら周年でよく活着する。強い日陰に弱いので、他木と重ならないように植えないと枝枯れを起こす。植え付け時に大きくなることを見越して距離を開けておく。排水が悪いと根腐れを起こすので、やや高めに盛り上げて植える。
2)剪定・整枝
5月に新芽の出たときのみどり摘みと、秋から冬にかけてのもみ上げは欠かせない作業。葉の伸び方がクロマツなどに比べて弱いのであまり強く揉む必要はない。秋には込みすぎた小枝を透かし、内部によく日が当たるようにする。
3)病害虫
クロマツに準じる
4)施肥
成長の遅い木なので、冬の間に鶏ふんをスコップ2杯、油かすを2握り根元に深く埋める。
4.ふやし方と入手のポイント
実生、接ぎ木が一般的。接ぎ木の場合はクロマツを台木にして割り接ぎを行う。接ぎ木苗で仕立てたものは幹肌が良くないので、庭木としては実生苗から仕立てたものが珍重される。

 

ダイオウショウ 【別名】ダイオウマツ  (マツ科)

・陽地を好む樹木

・暖地に適する樹木
・樹姿を観賞する樹木

1.特徴
1)ダイオウショウの特徴
北アメリカ原産で、本州の日本海側は新潟県、太平洋側は宮城県まで、九州四国では広く使われている庭木で、どちらかというと暖かい地方を好む。
高さは30〜35m、幹周りは3mになり、壮観。葉は一箇所から3枚出ており、マツ類の中では最も長く20〜40cmに伸びる。伸び方は他のマツ類と違い、長く垂れ下がり羽根箒を立てたような形になる。冬芽は銀白色をしており、春に伸びるみどりも雄大。幹は灰褐色で材には樹脂が多く、枝は太いが細枝が少ないので樹形は粗雑で日本のマツとは全く趣が異なる。日当たりがよく、水分の多い肥よく地を好み、小さい木のうちは成長が遅いが生育するにつれ成長が速くなる。細根が少ないため移植は難しい木で、台風で大木が倒れることがある。
2)ダイオウショウの仲間と特徴
①テーダマツ
北アメリカ東南部の海岸地方の原産。葉は、一ヶ所から3枚出ているが、長さは10〜15cmでそれほど長くない。日当たりの良いところを好み、深根性で潮風に強く成長も早いが日本ではあまり普及していない。
②リギダマツ
北アメリカ東部地方の原産で寒さに強く、砂地や乾燥地にも耐えるのでアメリカでは砂防用に使われている。北海道でも良く生育する。葉は3枚で8〜9cmとテーダマツよりも更に短く、暗緑色で硬い感じがする。樹皮は赤褐色で萌芽力があり、切り株から葉を束生した短枝が多く出る。
③ストローブマツ
北アメリカの北東部原産で、高さは40m、幹周りは2〜3mになる。ストローブ五葉、アメリカ五葉の名前があり外国産でも葉が5枚ある。明治中期に日本に移入され、北海道南部では防雪林に植えられている。葉は8〜14cmで、チョウセンゴヨウよりやや長め。日当たりの良い場所を好み、成長は早いが潮風には弱いので海岸地方では使えない。日陰でもよく耐えるので他のマツには条件の悪いところでも、場所さえ選べば使える。

2.用途と配植
外国産のマツは仕立てによって樹形を変えることができないので一般的に日本の和風庭園には使わない方が無難。幹をまっすぐに伸ばして四方に枝分かれした整形の樹形をそのまま楽しむのが上手な配植で、洋風の芝庭に一本だけを独立植えにしたり、周囲の植え込みに混植するなどがよい。幼木を30〜45cmの鉢に植えてポーチやテラスに置いて観賞し、大きくなったら庭に植え出すのもよい方法。配植は洋風の花木類とならばよく調和する。ハナミズキ、タイサンボク、アメリカデイゴ、モクレン類、アカシア類、トチノキ、カルミア、セイヨウシャクナゲ、カリステモン、キョウチイウトウなどに合い、イヌツゲやドウダンツツジなどの刈り込み物にもよく似合う。

3.手入れのポイント
1)植え付け
細根が少ないので移植の難しい木であるため、小さな苗から育てる。日当たりのよいやや湿気のある土地に植え付けるとよく育つ。時期は3月〜4月または10月〜11月がよい。
2)剪定・整枝
放任状態で幹をまっすぐに伸ばすが、伸び過ぎる時にはみどりの真ん中の長い物を摘み取り成長を抑制する。秋から春にかけて古葉をもみ上げ、込みすぎた枝を透かして風通しと日当たりをよくする。
3)病害虫
マツケムシに葉を食害されることがある。対策はクロマツに準じる。
4)施肥
成長の早い木なので、冬季に寒肥として鶏ふん、油かす、化成肥料などを与える。

4. ふやし方と入手のポイント

日本ではほとんど結実しないが、実生による。1〜1.5m程度の幼木を購入して植える。

ツガ 【別名】ホンツガ/トガマツ/トガ  (マツ科)

・日陰地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴
1)ツガの特徴
九州、四国、本州中南部から屋久島にまで分布する。枝はよく込み合って葉も密に付き、幹はまっすぐに立ち高さは30mになる。樹皮は灰白色で縦に深く裂ける。葉は線形で扁平、1〜2cmで、先端は矢筈形で柔らかく丸みを帯びている。日当たりの悪い陰地で良く生育し、煙害や潮風には強いが成長は遅く浅根性で移植力は弱いので大木の移植は困難。
2)ツガの仲間と特徴
①コメツガ
寒さに強く、ツガより寒い本州中部以北に分布する。高さ20〜25mになるがツガに比べて葉は小型で6〜15mmで柔らかい感じ。葉が小型であることを米にたとえて米栂の名がある。樹皮は灰白色で縦に浅く裂ける。
②カナダツガ
北アメリカ原産で本州にまれに植えられている。葉色はツガよりも明るい緑色で、樹形は円錐状になる。
2.用途と配植
成長が遅く枝葉が密生するので、植え込みに混植するのに向いている。刈り込みに耐え潮風に強いので生垣として仕立てることもできる。洋風庭園向きで広い芝庭であれば独立樹として使える。
3.手入れのポイント
1)植え付け
大木の移植は難しいので、幼木を植える。
2)剪定・整枝
放置しても整形を保つので、冬に込みすぎた枝、枯れ枝を取る程度でよい。生垣に仕立てたものは5月と10月の少なくとも2回は刈り込みが必要。
3)繁殖
実生による。

ヒマラヤスギ 【別名】ヒマラヤシーダ/インドスギ  (マツ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴
1)ヒマラヤスギの特徴
インドのヒマラヤ地方原産で、日本へは1879年(明治12年)にカルカッタから種子が入ったのが最初と言われており、北海道南部から本州、四国、九州の各地に植えられている。樹高は45m、幹回り9mに及ぶ大木になり、樹齢の長い木。成長は速く、30年くらいまでは雄花しかつかないが以後、老木になると雌花をつけ、松かさができる。浅根性で風に弱いのが欠点だが、萌芽力が強く、刈り込みや大枝の剪定に耐えるのでどんな樹形にでも仕立てられるが、本来の樹形は端正な円錐形。
よく伸びた枝は垂れ下がって地を這い雄大。樹皮は灰褐色で割れて剥げ落ち、葉は長さ3cmで灰緑色、針状で鋭くとがり、短枝に多数が束状につく。新しく伸びた枝には葉が一枚ずつぱらぱらとつく。種子が飛散した後は松かさの芯がろうそくを立てたように残る。土質は選ばずどこでもよく育つが、湿地では浅根性のため根が伸びず風で倒れやすくなる。
2)ヒマラヤスギの仲間と特徴
①レバノンスギ
レバノンシーダともいい、高さは15〜24m、枝が極端に横に広がり、上部のものは短くて全体にピラミッド状になるのが特徴。レバノン山中でたくさん自生していたもので、ソロモン王が神殿建立に用いた。古代アッシリア王の象徴とされ、聖書にも出てくる由緒の古い木。
②アトラススギ
北アフリカ原産で、葉はやや短めで、色は粉白緑色をしている。植物園などにあり、一般的にはあまり使われていない。
2.用途と配植
洋風庭園や公園樹に用いられるのが一般的で、芝庭に植えて円錐形の樹形を楽しむが、成長の速い木なのでかなりの広さが必要。萌芽力が強いので主枝を短く切り詰めて円筒形に仕立てれば狭いところでも使えるが、味がなくなり手入れも欠かせない。建物よりに列植すると枝が伸びすぎて困ることがある。和風庭園にチャボヒバのような玉ちらし形に仕立てたり、適当な高さで心を止めて生垣にしたりすることもできる。列植はオオムラサキ、サツキ、ドウダンツツジ、イヌツゲ、キャラボクなどの玉物を添えると円錐形の樹形が引き立つ。
3.手入れのポイント
1)植え付け
若木は移植しやすいが、大木は根回しを行う方が安全。時期は4月〜5月が適期。
2)剪定・整枝
秋から冬の間に、込みすぎた枝や立ち枝を整理する。大きくなりすぎたものは思い切って太枝を切り詰めて更新することができる。
4.ふやし方と入手のポイント
実生または、挿し木による。
一般的に出回っているものは、実生苗が少なく、挿し木苗が多いが挿し木苗は横に枝が出て形が悪いものが多いので見定めて購入する。

カラマツ 【別名】フジマツ/ニッコウマツ  (マツ科)

・陽地を好む樹木

・寒冷地に勧められる樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

 

1.特徴
1)カラマツの特徴
本州中北部の静岡、宮城、石川などの各県に自生するもので、北海道南部まで植えられている。日当たりの良い乾燥したところでよく育つが、風に弱く移植力も弱い。落葉樹で寒さに強いので主として関東以北で使われている。
幹は直立して高さ30m、幹周りは3mになる大木もある。樹皮は灰褐色で裂け目ができ、うろこ状になってはげ落ちる。葉は柔らかい針状で、芽出しの時は燃えるような淡緑色で、後に緑色になってくる。枝はやや水平に出て、葉は短枝上に20〜30枚群生し、萌芽力も強いので生垣にも使える。
材は建築用になるので、林木として造林されているものが多く、樹皮は染料に、樹脂からはテレピン油がとれる。富士松、日光松は産地からきた名前で、唐松とも書くが、これは葉の着生状態が絵に描いた唐松風であることから名付けられたもの。
2)カラマツの仲間
グイマツ
落葉性で新芽の色はカラマツより緑が濃く、表が暗緑、裏が白緑色。北方領土の色丹島、エトロフ島に分布しているのでシコタンマツともいい、北海道にも昔は分布したと言われている。
2.用途と配植
植えられる地域が限定されるが、生垣、芝庭の植え込みに混植すると新緑の色がとても美しい。洋風の庭に疎林風に寄せ植えにすると瀟洒な庭になる。煙害に弱いので都市部には向かない
3.手入れのポイント
1)植え付け
乾燥した肥よく地が適している。植え付け時期は3月頃だが、大木の移植は避ける。
2)剪定・整枝
萌芽力はあるので、刈り込みによってどんな形にでも仕立てられる。風や雪で枝が折れやすいので伸びすぎないように切り戻しておく。
3)繁殖
実生または、新しく出た枝を秋に挿す。

アカエゾマツ 【別名】シンコマツ  (マツ科)

・日陰地を好む樹木
・寒冷地に勧められる樹木

1.特徴
1)アカエゾマツの特徴
北海道の長万部、黒松内、寿郡を結ぶ線以北あり、岩手県にも見られる。針葉は長さ6〜12mm。断面はやや四角で先が尖り、葉の両面に白い気孔線がある。樹肌は赤褐色で丸いかけらのようにささくれ立つ。樹皮が赤いのであかエゾマツといい、盆栽として喜ばれるが庭木にもよく、北海道ではぜひ使いたい木。アカエゾマツに対してクロエゾマツと呼ばれるものがあり、併せて一般にはエゾマツと言われている。北海道の木に指定されている。樹形や林木としての価値などからアカエゾマツの方がよく利用されているが、大木の移植はできないので高さ2m程度のものを使う。
2)アカエゾマツの仲間と特徴
①クロエゾマツ
植物学上ではクロエゾマツがエゾマツになる。樹肌が黒いのでクロエゾマツというのではなく、アカマツ、クロマツに対比しての名前。樹肌はやや黒みがかった褐色で滑らかな感じがする。葉は断面が偏形で上面だけに白い気孔線があり区別できる。
②ドイツトウヒ 【別名】オウシュウトウヒ
ヨーロッパ原産で日本全土に植えられており、陰樹で円錐形の整形を保つので、洋風庭園向きの木。浅根性で風で倒れやすく、公害に弱いのが欠点。
③トドマツ
トドマツと変種のアオトドがあり、ともに北海道に自生している。庭木としては公害に弱いので都市部には適さない。若木は道内でクリスマスツリーとして使われる。
2.用途と配植
洋風の芝庭の単植に向いている。植え付けは春に芽が伸び出した頃が最適で、小苗を買って植えるのが安全。いずれも萌芽力が弱いので剪定はあまり行わない。

イブキ 【別名】カマクライブキ/ビャクシン  (ヒノキ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴
1)イブキの特徴
福島県以南の山上、海浜などに自生する。本州、四国、九州、沖縄に分布。
イブキは伊吹山に、カマクラは鎌倉に多く見られることからきている。高さは25m、径は2mになる。樹形は円錐形で葉はうろこ状の葉が対生して密着し(鱗形葉)、枝がひも状になるものと、長い針状でスギに似た葉(針状葉)で鋭くとがったものがある。古くから社寺の境内や墓地、庭園、公園などに植えられており。園芸品種もたくさんある。陽樹で乾燥した砂質壌土を好むが、丈夫なのでどこでも使える。潮風や大気汚染にも抵抗力があり、萌芽力もあるが、移植力が弱いので大木は根回しをしてからが安全。
2)イブキの仲間と特徴
①ミヤマビャクシン
イブキの変種で、高山の砂礫地や岩壁に自生している。イブキと同様の葉を持ち、幹は横に成長し曲がるものが多い。深山柏槙は深山に自生するところからきており、この古木はシンパク(槙柏)といって盆栽として喜ばれている。若いときは針状葉だが古木になると鱗形葉(檜葉)になる。
②カイズカイブキ
北海道西南部、本州、四国、九州、沖縄に広く植えられているイブキの園芸品種。高さは20m、径は1mになる成長の速い木で、樹形は円錐形で側枝がよじれて立ち上がる性質がある。葉は普通は鱗形葉だがイブキより太め。あまり強く剪定すると針状葉(杉葉)が出てくるので萌芽力は強い木であるが、あまり強く刈り込んだり剪定したりしない方が安全。
成長は速く、潮風や大気汚染に強く、土質を選ばない。公害に強い木として公園や道路の植樹帯、工場などにたくさん使われているが、関西では昔から生垣として植えられていたもの。この木はナシの赤星病の病原菌の中間寄主(冬に胞子がこの木で越冬する)になるので、ナシ栽培の多い近郊農村地帯では条例で植えることを禁止しているところもある。丈夫で品の良い木なので都市部では生垣樹や庭園、特に洋風の庭には欠かせない木。浅根性で風で倒れやすいので大木になったものは注意が必要。
2.用途と配植
洋風庭園の列植によく、オオムラサキ、サツキ、トベラ、ドウダンツツジなどの整形の玉物と交互に植えるとよい。生垣では若木の間は刈り込んで自由な形に仕立てられる。
3.手入れのポイント
1)植え付け
イブキ類は日当たりのよい所を好み、土質は選ばない。排水の悪い所ではやや高植えがよく、時期はマツに準じる。どちらかというと石灰質のところによく育つので、酸性土では石灰を施すとよく育つ。
2)剪定・整枝
強く刈ると杉葉がでるので、生垣以外はあまり剪定せずに、樹形を乱す枝を元から切り透かすか、新芽を指で摘み取る。
3)病害虫
春にさび病が出ると雨のときに黄褐色でゼリー状のものが垂れ下がる。葉ふるい病は夏に黄褐色になって落葉する。普通の状態では丈夫な木なので病害虫の発生はあまりない。風通しをよくして施肥を行う。
4.ふやし方と入手のポイント
繁殖は挿し木で、3月か梅雨時に挿す。挿し木苗の入手は枝が曲がっていないものを選ぶ。

ヒノキ 【別名】ホンヒ/ヒバ  (ヒノキ科)

・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴

1)ヒノキの特徴
本州中部から四国、九州に分布し、本州北部から北海道南部まで植えられている。樹形は、幼時は円錐形だが老木になると卵型になる。葉はうろこ状で交互に対生し裏面の気功線は白色でY字型になり葉先は鋭くない。樹皮は赤褐色で縦に長く裂け枝は水平に出る。陰樹だが、日当たりのよいところにも生育し、排水のよい適湿地を好むが乾燥地でも育つ。浅根性で風に倒れやすく大気汚染や潮害に弱いのが欠点。萌芽力があるので刈り込んで生垣にもできる。ヒノキは火の木の意で、昔この木をこすり合わせて火を出したことから出ている。
2)ヒノキの仲間と特徴
①チャボヒバ 【別名】カマクラヒバ
ヒノキの園芸品種で、高さは5m、葉は小さく密生する。北海道西南部から本州、四国、九州、沖縄まで植えられている。端正な樹形が好まれて和風庭園によく植えられていたが、手入れに手間がかかるので近年はあまり使われなくなった。チャボヒバは枝の短くなった状態を鶏の足の短いチャボにたとえたもの。カマクラヒバはチャボヒバのうちで葉も大型で樹高も10mくらいになるものをいうこともある。陰樹であるが日当たりのよいところでもよく育つ。樹形は狭円錐形で整形を保ち成長は遅い方。萌芽力はあるがあまり強い剪定はできない。移植力は大木の場合あまり強くないので根回しをしてから行う。葉の小さいチャボヒバは和風庭園向きで、大型のものは洋風芝庭に列植したり、独立植えにして使える。数本を寄せ植えにし高さを変えて植えると品のある植え込みができる。
②クジャクヒバ
ヒノキの園芸品種。細かく分枝した小枝が長枝に対生して重なり合わないので端正な形となり、ちょうどクジャクの羽のようにみえるのでこの名がある。芽出しの時には黄金色で次第に緑化する傾向があるが、いつも黄金色を保つ斑入り種もある。陽樹で土質は選ばないがよく肥えた適湿地ではことのほか色が鮮やか。移植はチャボヒバよりやさしいが、成長は遅く、円錐状か玉状に仕立てる。葉色が明るく開放的な感じなので洋風の芝庭に適している。
③スイリュウヒバ 【別名】イトヒバ
ヒノキの園芸品種で、クジャクヒバとは反対に節間が長くなり、枝が垂れ下がるもので、その様子をシダレヤナギにたとえて垂柳檜葉という名がある。葉のつき方が粗く深緑色で、別名のイトヒバの名前はサワラの変種のヒヨクヒバにもつけられており、造園上ではこの両種を混同してイトヒバとして扱っているが本種のほうはヒノキの特徴である葉先が鋭く尖らず円味を帯びているいるので区別できる。
陰樹で放任しても円錐形になる端正な庭木だが、造園上ではヒヨクヒバのほうが多く使われる。端正な樹形で日陰に強いので北側の玄関の植え込みなどによく使われる。和風の庭の車回しや植え込み、建物よりに単独植えもよい。

2.用途と配植
ヒノキは萌芽力が強いので生垣樹として使われるが、都市部では公害に弱いのであまり適さない。樹幹がまっすぐに伸びて荘重な感じがするため社寺の境内によく使われる。庭木としては自由に仕立てられるので庭園の植え込みに向いている。古くから建築用材として使われているが、多くの変種や品種があり、庭木としてはこうした種類のほうが多く使われている。

3.手入れのポイント
1)植え付け
若木のうちは移植が容易で、マツと同じ時期に行うが、老木は根回しが必要。
2)剪定・整枝
枝が込み過ぎると枯れ込んでくるので長く伸びた小枝を透かして、短い枝を残してがっちりと仕立てる。刈り込みは厳冬期に行うと葉先が枯れ込んでくるのでできるだけ避ける。
3)病害虫
イブキに準じる。
4)繁殖
主に挿し木によるが、実生もできる。若い苗を購入するとよい。

サワラ 【別名】ヒバ/サワラギ  (ヒノキ科)

・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴
1)サワラの特徴
本州中部(岩手県)から九州にかけて分布し、ヒノキより寒さに強く、九州、四国、本州から北海道南部まで植えられている。さわらぎを略したのがさわらとなったもので、この材がヒノキより軽いところからさわら木と呼んだものだろうと言われている。樹形は円錐形になり、樹皮は赤褐色で縦にうすく剥がれる。葉はうろこ状で交互に対生し、ヒノキより葉先が鋭くとがるのが大きな相違点。葉の裏側の白色気孔線は幅が広く、ヒノキのY字形に対してサワラの方はX字形になるので比較すると簡単に区別できる。陰樹でヒノキよりも日陰に強いが、大気汚染や潮風にはあまり強くない。排水のよい適湿地で柔らかい土質を好むので関東付近ではよく使われている。萌芽力があるので仕立ては自由にできるが、移植はやや難しいので大木は根回しを行ってからの方が安全。変種や品種が多くあり、庭木として多く使われる。
2)サワラの仲間と特徴
①ヒヨクヒバ 【別名】イトヒバ
サワラの園芸品種で、本州、四国、九州に植えられており、高さは10m、径50cmになるが庭木としてはあまり大きなものは使われていない。樹形は円錐形で枝は横に広がり、小枝は細長く伸び、糸のように垂れ下がり長いものは30cmになる。「比翼檜葉」は枝が並んで垂れ下がった状態がちょうど二羽の鳥が互いにその翼を並べているのににているところからつけられたもの。葉先がサワラと同じく鋭く尖っているのでスイリュウヒバと区別できるが、イトヒバとも呼ばれる。日当たりのよい場所を好むが、半日陰地にも耐え、土質を選ばず強い種類だが、成長はあまり早くない。萌芽力はあるが、繁殖力はあまり強い方ではない。スイリュウヒバと同じく端正な木なので、玄関や車回し、芝庭の独立植えによく使われる。

②シノブヒバ 【別名】ニッコウヒバ
サワラの園芸品種でヒムロとサワラの中間的性質を持っており、造園上は日光ヒバとして通用している。本州、四国、九州に植えられており、日陰でも育つが日の当たる場所の方が樹形が良く整う。樹形は円錐形で枝は立ち上がり気味に出て葉は斜めに反り返る。樹勢はあまり強くなく短命で、大気汚染や潮風に弱いのが欠点。葉の色は淡緑色だが、新葉が黄色のオウゴンシノブヒバ(ホタルヒバ)もある。シノブヒバは明るい感じで整形を保つので洋風の芝庭に植えると良い。萌芽力があり移植も幼木は容易なので、住宅庭園の生垣に良く使われる。
③ヒムロ 【別名】シモフリバナ/ヒメムロ
サワラの園芸品種で、葉は細かい針状で上面は灰緑色をしているが、下面は銀緑色で遠くから見ると灰白色でせん細な感じ。枝は細かく密生し、高さは4〜5mで、庭園に良く使われる。ヒムロは葉が柔らかい感じで洋風庭園に列植するのに向いている。鉢植えにして玄関のポーチなどに置くのもよい。若木のうちは端正な円錐形なので小住宅に向くが、生垣にするには強い刈り込みが出来ないので注意が必要。
④アスナロ 【別名】ヒバ/アテ/アスヒ/羅漢柏
九州、四国、本州に分布し北海道南部まで植えられている。葉はヒノキに似て大型なので「明日はヒノキになろう」という意味を持たせてアスナロ、アスヒ(明日檜)の名がある。造園上はこの変種のヒメアスナロの方をよく使う。高さは1m、枝は密生し半球形になるので低木として庭園の根締、生垣用に使う。

⑤ニオイヒバ
北アメリカ北部とカナダが原産で、北海道から本州、四国、九州に植えられているが原産地のように大きくは育たない。樹形は狭円錐形で、葉をもむとパイナップルのような芳香がある。陰樹で萌芽力もあり、寒冷地の庭園向きで列植や生垣によい。

2.用途と配植
刈り込んで、よく生垣に使われる。成長が速く萌芽力があるため高生垣に仕立てるが、淺根性で風にはあまり強くない。円筒形に刈り込んで列植することが多く、洋風、和風いずれの庭でもよく調和し、感じもヒノキよりソフト。

3.手入れのポイント
ヒノキに準じる。

スギ   (スギ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴
1)スギの特徴
スギは幹がまっすぐに伸びるのでこの名があり、本州、四国、九州の各地に分布し北海道中南部まで植えられている。葉は鎌のような針状でらせん状につき、冬も枯れ落ちない。花は3月に開き、たくさんの黄白色の花粉を出す。近年問題になっている花粉症は、植林地で大量に開花し飛散されるスギの花粉が主な原因であると言われている(ヒノキやシラカンバの花粉症もある)都市公害に弱いことと、花粉症の問題から近年は庭園樹としてはほとんど植えられなくなっている。陽樹で適湿地では生育がよいが、都市公害に弱いので林木としては重要な木であるが庭木としてはあまり使われない。荘重な感じがするので神社によく植えられており、日光の杉並木は有名だが徐々に衰弱し問題になっている。スギには太平洋側に自生し枝の垂れないオモテスギと、日本海側に多く葉先が柔らかく垂れ下がるウラスギの二系統がある。古くから林木として栽培されているためにたくさんの変種や品種があり、その中に造園上で使われているものがある。
2)スギの仲間と特徴
①アシウスギ 【別名】ダイスギ/ウラスギ/北山台杉
本種はウラスギの系統で、京都の北山地方で栽培し、丸太材として幹を切った後に芽出しした枝を育てて、武者立ちとしたもので、和風庭園、特に茶庭には好まれている。葉は普通のスギより硬く、萌芽力が強いのでした枝が地に着くと根を下ろす性質がある。高さは3〜5mが多く、幹立ちは3本〜5、6本程度。仕立てたものはたいへん高価だが、最近は別種のスギで同様の仕立てをしたものがあり、これは安価だが味がない。
②ヨシノスギ(吉野杉)
本種は奈良県吉野川流域地方で栽培されているもので、幹はまっすぐに立ち、針状の葉は枯れても樹上に残る。樹形はろうそく状で、葉も柔らかい感じで、高さは2〜4m、和風庭園向き。
日当たりのよい場所を好むが、根元に陽が当たり乾燥するところは嫌う。よく肥えたところを好み、排水のよいことが生育条件なので庭園では適地が少なくなり、公害にも亜まり強くないのでダイスギ(アシウスギ)ほど使われなくなったが、瀟洒な感じで和風庭園に向いている。
③エンコウスギ 【別名】アヤスギ
スギの園芸品種で、枝はよく伸びるが不揃い。枝の長く伸びた状態がテナガザル(猿猴)の手に似るのでこの名がある。萌芽力はあるが、成長は遅い方で、低木として茶庭などに良く使う。

2.用途と配植
アシウスギは玄関前庭や茶室に1本または、2、3本寄せ植えにして、アセビ、ドウダンツツジ、キャラボク、サツキなどをあしらい、つくばいを添えるとそれだけで立派な庭になる。
3.手入れのポイント
1)植え付け
2月下旬から10月までの間で、夏と冬の極端な時期は避ける。乾燥するところでは夏に敷き藁を行うと効果がある。風で倒れやすいので支柱が必要になる。
2)剪定・整枝
萌芽力があるので、刈り込み仕立てが普通。3月、7〜8月が適期。込みすぎた場合は正月前に立枝、垂れ下がった枝を抜く。
3)繁殖と入手のポイント
一般的には挿し木で、6〜7月に行う。ダイスギは庭に合わせて完成品を選ぶ。寄せ植え用のスギは幼木を植えて仕立てる。

 

メタセコイア   【別名】イチイヒノキ/アケボノスギ (ヒノキ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴

メタセコイアは、1941年(昭和16年)に大阪市立大学の三木茂理学博士が化石を発見し、現存しないと思われていたが、その後、中国湖北省と四川省境の祠に高さ35m、幹回り7mの巨木が発見され、1940年(昭和21年)に発表されたもので、前世紀からの生き残り、生ける化石として騒がれた植物。日本には1949年(昭和24年)にアメリカのチェネー博士から天皇陛下に献上されたものが最初で、翌1950年3月に100本の苗が送られてきた。これが、全国の各地に植えられ、今では普通の造園木としてどこでも見られるようになった。針葉樹には珍しい落葉樹で、九州から北海道まで広く植えられている。寒さには弱いので、北海道では成長が遅いが、成長するにしたがってよく伸びると言われている。関東以南の地域では成長も速く、よく肥えたところでは1年に1〜1.5m伸びる。日本に入ってから日が浅いが、樹高は20m、径50cmのものがある。樹形は円錐形で、樹皮は赤褐色で薄く縦にはげ落ちる。葉は線形で2列に対生し、枝も対生。葉色は青緑色で。普通の針葉樹より明るく柔らかい感じがする。秋には橙赤色に色づき、小枝が葉とともに落ち、太い幹とやや斜めに出た太枝が残って冬の姿も味がある。陽樹で、成長は非常に速く水湿地を好む。特に排水のよい深層度でよく成長し、萌芽力も強く深根性なので生垣にも使える。大木の移植は根回しを行う方が安全。

2.用途と配植
円錐形の樹形を保つので、公園樹や洋風庭園に向いている。学校の記念碑などのバックに植え込むとよい。よくに湿地などで、他の木が植えられない時に列植するのも上手な使い方。オオムラサキ、レンギョウ、イヌツゲなどの低木やモクレン、タニウツギ、ハナミズキ、ドイツトウヒイタリアサイブレスなどと混植すると洋風の植え込みができ、芝庭や花壇をよく引き立てる。生垣は冬に小枝が落ちるので境界垣には向かないが、庭垣としては使える。

3.手入れのポイント
1)植え付け
幼木の移植は容易なので、春の芽出し前に植え付ける。大木は根回しを行う方が安全。
2)剪定・整枝
大きくなりすぎる木なので、所用の高さで心を止めて仕立てる。
太枝を切り詰めても芽出しするので、刈り込み仕立てもできる。
3)病害虫
カミキリムシ、ツガカレハなどがある。
4)繁殖
挿し木、実生による。

ラクウショウ   【別名】ヌマスギ/落羽松 (スギ科)

・陽地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木

1.特徴
北アメリカ東南部、メキシコの原産で、本州、四国、九州に植えられている。
原産地では樹高50m、径2mになるが、日本でも25mのものがある。樹形は円錐形でメタセコイアによく似ているが、葉がやや短く互生するので区別できる。樹皮は赤褐色で、縦に薄く剥げ落ち、老木では樹冠が丸くなってくる。ラクウショウをはじめ、カラマツ、メタセコイアなどの落葉針葉樹は葉が柔らかで、新緑が美しいのが特徴。ラクウショウは特に水分の多いところを好み、沼地、河岸など水のあふれるような場所に好んで生育し、老木になると根から膝という気根が地上に立ち上がってくる。花は4月に咲き、果は10月に熟す。枝が折れるくらいたわわに実るが種の発芽はよくない。陽樹で成長は極めて速く、深根性で石灰岩質のところを好む。大気汚染にはそれほど強くなく、風で倒れやすいのが欠点。

2.用途と配植
秋の紅葉は赤褐色で美しく、円錐形の樹形が端正なので洋風庭園の植え込みに適している。遊園地や公園の池の畔や水辺など条件の悪いところに植えるのに適しているが、かなりの乾燥地にも使える。配植はメタセコイアに準じる。

3.手入れのポイント
メタセコイアに準じる
繁殖も同様だが、挿し木での発芽はよくない。

 

コウヤマキ   【別名】ホンマキ/トウマキ (コウヤマキ科)

・樹姿を観賞する樹木

1.特徴
日本特産で、紀伊半島から九州、四国の山地に自生し、本州北部から北海道南部に植えられている。紀州の高野山に多く見られるのでこの名があり、マキというとイヌマキとコウヤマキがあるが、植物学的にには、イヌマキはマキ科で別の種類になる。高さは15mほどになり、葉は15〜40枚が一カ所に輪生し、ちょうど傘を逆さにしたような感じ。一本の葉は細長く中に溝があって先端が割れており、本来は二枚の葉であったものが外見上は密着して一枚の葉のようになったもの。樹形は端正な円錐形で、樹皮は赤褐色で縦に裂ける。幼木の成長はきわめて遅いのが特徴であるが、その理由を「和漢三才図会」には「高野槙は紀州高野より出ず、人その小枝葉を折り仏前に供するゆえに、未だその大木を見ず」と書いてある。大木になっても端正で社寺境内に多く見られる。
陰樹であるが大きくなってからは日当たりのよいのを好む。湿地にも耐えるがやや乾燥した肥よく地を好み、やせ地では葉が黄色くなる傾向がある。萌芽力は小さいが下枝が上がらないのであまり手入れの必要はない。

 

2.用途と配植
端正な木なので和風、洋風いずれの庭にも向き、単独植えで樹形を楽しむ。ヒマラヤスギ、ナンヨウスギ、コウヤマキの三種は本多清六博士によれば世界の三大庭園木とされている。東照宮では神木となっているが、空気のきれいな湿度の高いところでないと向かないので都市部ではあまり使えない。

3.手入れのポイント
萌芽力がないので刈り込みは避け、込み過ぎた枝を間引きする程度。肥料は多く与えたほうが葉色がよくなる。繁殖は実生か幼木からとった穂を挿し木する。

イチイ   【別名】アララギ/オンコ (イチイ科)

・日陰地を好む樹木
・寒冷地に勧められる樹木
・樹姿を観賞する樹木
・生垣に作れる樹木

1.特徴

日本各地からアジア北東部にかけて広く分布するもので、一名アララギというが、これはアイヌ語の「ララマニ」から転じたものではないかと言われている。北海道では一般にオンコで通っている。イチイは一位で、昔この木で笏(しゃく)を作ったことによるもので、樹木の中で最高位を意味し、昔アイヌ人はこの木で弓を作ったと言われる。
高さは15m、径は80cmになり、雌雄異株で、雌株になる種子の仮種皮は食べられる。樹皮は赤褐色で縦に浅く裂け樹冠は広卵形で、樹齢が長い木の一つ。北海道、本州、四国、九州、沖縄まで分布しているがどちらかというと寒地によく生育し、岐阜県の位山は海抜1000mの位置にあり、この木が群生していることで知られている。陰樹だが、日当たりの良いところでもよく育ち、刈り込みもできるので品の良い庭木として知られている。しかし、暖地での生育はあまりよくないので、むしろ変種のキャラボクの方が多く使われている。

2.用途と配植
萌芽力があり、刈り込みもできるので寒地の防風垣として使われるが、丸刈りや段作りとして洋風、和風の庭園に主木としても使える。

3.手入れのポイント
1)植え付け
新芽の成長を始めた頃が最適期で、北海道では5月中旬〜6月中旬、関東では4月中旬頃。適期を外すと移植の難しい木。
2)剪定・整枝
新梢が伸びてやや固まった5月〜6月に刈り込みを行う。
3)病害虫
日陰のものにカイガラムシが葉にびっしりつくことがある。
4)繁殖
実生か、本年生の新梢を挿し木する。
5)入手のポイント
根回しをして、細根の密生したものを選んで植える。

 

カヤ   【別名】ホンカヤ/カヤノキ (イチイ科)

・日陰地を好む樹木
・樹姿を観賞する樹木

1.特徴
1)カヤの特徴
本州、四国、九州に自生するもので雌雄異株。雌株は枝が横に広がり、雄株は枝が上向きに出ると言われる。種は10月に熟し、油をとり食用になる。
樹皮は灰褐色で、老木になると縦に裂けてはげ落ちる。枝は硬い感じで幹から車輪状に出て、地下部からひこばえをたくさん出す。葉は濃緑色で硬く、線状で先端が鋭くとがっている。材は碁盤や将棋盤として最上のもの。カヤは「日本釈名」という書物に蚊遣り(蚊を追い出すためにいぶし出す)に用いたからとあるが、これは俗説で本当は古い名前の「カヘ」から転じたと思われる。

2)カヤの仲間と特徴
よく似たものにイヌガヤ(イヌガヤ科)があるが、丈は低く、樹皮は黒褐色で種から油分を採る。植物学的には別種で、イヌガヤの名は、カヤに似ていても核が苦くて食用にならないからだと言われている。

2.用途と配植
萌芽力がきわめて強いので、老木をズンド切り(太い幹を途中で切り落として小枝を吹かせたもの)にして、茶庭や庭園の主木に使う。若木は味がなく移植が難しいので、一般に老木を使う。カヤ、スギ、コウヤマキなど幹のまっすぐな木を選んで植えると荘重な感じが出るので、社寺の庭園に向いている。

3.手入れのポイント
1)植え付け
芽を出す頃が適期で、3月〜4月に行う。古い木でもよく活着する。
2)剪定・整枝
萌芽力が強いので、幹ものとして小枝を出させて込みすぎたものを透かす。刈り込んでろうそく仕立てにもでき、和風庭園向き。
3)繁殖
実生、挿し木による。
4)入手のポイント
老木を仕立てたものが庭園向きであるが、高価になる。

イヌマキ   【別名】マキ/クサマキ (マキ科)

  • 樹姿を観賞する樹木
  • 生垣に作れる樹木

1.特徴

1)イヌマキの特徴
本州、四国、九州、沖縄に自生し、植栽は伊豆、紀伊、土佐、宮崎、鹿児島などの暖地に多く、東京以北では少ない。海岸に多く自生しており潮風に強く下枝も下がらないので生垣樹として使われている。雌雄異株で高さは20m、径60cmになり、実は10月に熟し球形で紫緑色になり、外側は白色の粉をかぶったようになる。種子の下側にある花杔は楕円形または球形で、初めは濃紅色だが、熟すると紫色になり、肉質で甘味があり子供が喜んで食べる。この花托の形は羅漢が袈裟をつけて座っているのに似ているのでラカンの名があるが、別種のラカンマキの名はこれから由来している。イヌマキをラカンマキという地方があり両種は混同されているが、マキという名はマルキ(円木)の略ではなく、昔はスギをマキ(ほんとうの木の意)といったのに対して、この木をいやしんでイヌマキと呼んだのであろうと言われている。造園上でマキという場合はイヌマキ、ラカンマキを漠然と呼んでいる。
2)イヌマキの仲間と特徴
①ラカンマキ 【別名】マキ/羅漢樹
中国原産といわれているが、中国に自生品はないというのが定説。日本には九州南部、沖縄に自生すると言われており、庭園には古くから植えられている庭木のひとつ。外国でも多く使われており、イギリスへは1800年に入り、日本のマキとしてかなり多く植えられている。アメリカでは太平洋の南部でよく生育し、ドイツでは冬季の保護が必要だと言われておりどちらかというと暖地向きの庭木で、潮風に強く生垣樹としてよく使われる。
高さは5mで幹は直立し、樹形はイヌマキより引き締まった感じ。葉はイヌマキの方が長くて青味がかっているが、ラカンマキは短くて厚味がうすく幅も狭いので区別できる。花、種はよく似ている。

2.用途と配植
幹がまっすぐに伸び、端正な樹形で萌芽力もあり、自由に刈り込みができるので庭木としてはマツ、モッコクと共に重要。マツの古木に似せて貝造り、玉散らし形に仕立てたものは、玄関前庭や、主庭の真木としてよく使われ、洋風の公共建築や車廻しにサツキ、オオムラサキ、ドウダンツツジ、イヌツゲ、キャラボクなどの玉物を配植して一つの景を作るのが定型化しており、特に関東地方ではこのスタイルが好まれている。
潮風に強く、下枝が上がらない性質を利用してマサキ、トベラなどと共に海岸地方の生垣樹に使われている。住宅の生垣として丈夫な木だが、排気ガスに弱いので最近は都市部ではあまり使われなくなり、生垣樹を庭木として仕立て直したものが出回っている。和風庭園の主木としてなくてはならない木だが、洋風建築にもよく調和し、神社やお寺にもよく植えられている。

3.手入れのポイント
1)植え付け
幼木の移植はやさしいので春に行うが、古木は梅雨明け、または土用中に行う方が活着がよい。粘質土でやや湿気のある所を好むので、乾燥地ではマルチングするとよい。
2)剪定・整枝
芽出し時期が遅く4〜5月で、大きくなるにつれて樹形が乱れるため手入れには手間がかかる。マツなどと違って、どこで切っても枝を出すので仕立ては自由にできる。6月と9月〜10月に刈り込むのがよく、徒長枝や込みすぎた枝を切り透かし、葉先を刈り込む。正月前にもかなり徒長枝が出るのでこの時期に飛び枝を切り詰めてもよい。
3)病害虫
春にアブラムシがつくのでスミチオン乳剤の1000倍液を2回/月散布する。
4)繁殖
実生または梅雨期の挿し木による。
5)入手のポイント
真木として仕立てたものを使う。

ナギ   【別名】チカラシバ    (マキ科)

  • 日陰地を好む樹木
  • 暖地に適する樹木
  • 樹姿を観賞する樹木

1.特徴

本州、四国、九州の暖かい山地に自生するもので、関東地方の南部から西に植えられている。この大木が、奈良の春日山に多いことで知られている。
樹皮は紫褐色で滑らかで、樹高は20m、径1mになる。葉は厚い革質で楕円状披針形で対生し、20〜30本の葉脈が平行に走っており主脈はない。こういう葉の構造により横に裂いたり切ることが難しいのでチカラシバの名がついている。雌雄異株で種子は球形、10月〜11月に熟し紫黒色になる。
陰樹で、よく肥えた砂質壌土を好むが成長の遅い木。針葉樹だが葉の形は広葉樹と同じなので、取り扱いも広葉樹に準じる。萌芽力もあり移植もそれほど難しくなく、大気汚染にも抵抗力はある。奈良に大木があるのはアセビと同様に、シカがこの葉を食べないのも考えられる理由のひとつ。

2.用途と配植
神社や寺院に列植したり単独に植えられる。玄関前庭や車廻しの中心など、庭園にも仕立てて使えるが冬の寒さに弱いので寒地では幼木のうちは霜よけをする必要がある。

3.手入れのポイント

1)植え付け
4月頃が適期で、移植は容易だが、思い切って枝を切り詰めておくのが活着のポイント。
2)剪定・整枝
狭円錐形の整形を保つので、込みすぎた枝を切り透かす程度の手入れで十分。
3)病害虫
カイガラムシの害がある
4)繁殖
実生で秋に取りまきが一般的。挿し木、接ぎ木もできる。
5)入手のポイント
高さ4〜5mに仕立てたものを使う

 

イチョウ   【別名】ギンナン    (イチョウ科)

  • 陽地を好む樹木
  • 樹姿を観賞する樹木
  • 生垣に作れる樹木

1.特徴
イチョウは1科1属1種という、分類学上、大変に珍しい木。
この木は花粉の中に精虫がいて授精する珍しい木で、これは東大の小石川植物園にあるイチョウから発見された。雌雄異株で扇形の葉をしているが、分類上は針葉樹に属する。秋の黄葉が美しく、種は熟すと黄色になり、悪臭があって触れるとかぶれるが、内種子は銀杏で食用になる。樹勢は強く萌芽力が抜群で、防火力があると信じられ寺院に多く植えられている。

2.用途と配植
街路樹(雄木がよい)公園樹として植えられる。庭園には幼木を数本寄せ植えにして文人庭にしたり、地際から芽出しさせて刈り込みものとして仕立てることもできる。