9月(東京平均気温23.5℃)
台風時期の事前対策が必要となる。
秋に入るとモクセイなどの花が咲くが、他の花の種類が少ないので庭が少し寂しくなる。
1.台風に万全の備えをする
①台風前の対策
庭木は暴風の役目も負っているが、新しく植えてまだ十分に根が張っていない庭木には支柱を立てて保護する。
風で倒れやすい庭木は、コウヤマキ、コノテガシワ、サクラ、サワラ、スギ、アカシアなどの浅根性のものや、樹冠が茂りすぎているもの。
既に支柱が施してあるものでも、結束部のシュロ縄が腐っている場合は新しく縛り直す。
②台風後の処理
・台風が過ぎたらすぐに水洗いを行う
海からの潮風を内陸部迄持ち込むので、塩分が付着した庭木や草花にホースで強い圧力をかけながら地際の葉や葉裏まで綿密に水洗いを行う。
・立て起こしと切り戻し剪定
倒れた木はそのまま起こすと反対側の根が切れるので、反対側を掘り起こして元の位置まで戻して埋め戻し、支柱を立てる。
折れた枝は切り直す。折れたタケは根元から切り倒し、草花類は立て起こして支柱を添え軽い剪定を施す。
落葉や、落果した果実は集積して埋める。
・薬剤散布を行う
台風後は傷が原因で病害が発生しやすいので薬剤を散布しておく。また、花壇の草花には軽く施肥を行う。
花木類は落葉が原因で急に花を咲かせる事がある。返り咲きといい、アジサイ、ウメ、サクラ、ハナズオウ、レンギョウ、ボケなどに見られる。
2.庭木の移植
彼岸ころから植え付けの適期に入り、常緑広葉樹類は寒さがくる迄に植えておく必要があるが、落葉樹類はまだ葉をつけているので不適。
<9月に植える事ができるもの>
アオキ、オオムラサキ、カイズカイブキ、カシ類、カナメモチ、カルミア、キリシマツツジ、クチナシ、クロマツ、サツキ、シャクナゲ、ツバキ、トベラ、ヤツデ、ユッカ、カンチク、ホテイチクなど。
3.病害虫の防除
①ミノムシ
木の葉や小枝をつづり合わせてミノを作り、中に潜んで枝から枝へと糸をはいて移動し、葉を食害する。雑食性の害虫で、ウメ、カキ、サクラ、チャツツジ、ナンテン、フジなどに多く着く。小型のミノを作るのがチャノミノガで、葉ばかりで大型のミノを作るのがオオミノガ。
殺虫剤の散布ではミノに隠れてしまい効果が少ないので見つけ次第捕殺する。
②オオスカシバ
クチナシの葉を食害する大害虫。淡灰緑色で7cmの大型のイモムシで、葉色にまぎれてわかりにくい。夜間に盛んに活動し、一晩で丸坊主にすることもある。早朝か夜間に見つけ次第捕殺する。
③モンクロシャチホコ
サクラにつく毛虫で体長は5cm。赤褐色のきれいな色をしていて、葉にびっしりとつき食い荒らす。船の形ににているのでフナガタケムシ、またはサクラケムシともいう。ディプテレックス乳剤を散布する。
④その他の害虫
マツケムシが第2回目の発生をする。駆除しないと翌年もまた発生する。
チャドクガがツバキの葉を暴食するので、葉裏に群生しているうちに捕殺する。
シバにヨトウムシやマメコガネが発生する。
10月(東京平均気温18.2℃)
気温も下がり、秋の気配が濃厚になる。庭木も芝生も成長を止めて休止期に入り、落葉樹は紅葉し始めやがて葉を落とす。
1.庭木の植え付けはこれからが好期
庭木は気温の低下とともに樹液の移動が緩慢になるため、植え傷みが少ないので、移植の適期になる。
<10月に植える事ができる樹木>
オオムラサキ、カルミア、カンチク、モクセイ、サツキ、サザンカ、センリョウ、ツバキ、ヒイラギナンテン、マテバシイ、モッコク、モチノキ、ウメモドキ、ウツギ、エニシダ、カイドウ、コデマリ、ナンテン、ニシキギ、ニワウメ、レンギョウなど。
2.各種庭木の手入れ
①生垣の止め刈り
生垣は夏の間に刈り込んでおけば整形を保つが、秋の間にも少し伸びるので、10月の下旬に最後の化粧刈り込みを行う。
②刈り込みの注意
10月から正月までの間に整形仕立ての庭木は刈り込みを行うが、花木類で春に開花する庭木は10月中に花芽をつけているので刈り込むと花芽がなくなるため飛び枝だけを抜く作業に止める。
特に枝の先端に花芽をつける花木は、サツキ、ツツジ類、ジンチョウゲ、ツバキ、サザンカなどは刈り込まない。
ユキヤナギ、レンギョウなどは枝にびっしり花をつけるので刈り込むと花の数が減ってしまうので軽めに行う。
③アジサイ・ボタン
アジサイは夏に花首の下で切り戻しておいたものは下の方にふっくらとした花芽がついているのでその位置まで改めて切り戻す。枝先に花芽がついているものはそのまま残し、木質化した古枝は元から切り、若い枝に更新する。
ボタンは、一本の枝に花芽を1〜2個に制限するので、丸い花芽を残して、上は切り捨てる。芽と芽の間隔は5〜6cmにし、葉芽は小刀でかき取る。
アジサイやボタンは髄が太いため芽の真上で剪定すると切り口に近い芽が傷むため、芽と芽の中間で切る。
④ナリヒラダケ
タケの稈(かん)は、古くなると白っぽくなり美観を害するので元から切り取り更新する。小枝の込みすぎたものは間引き、長く伸びたものは節の所で切り戻して整形する。小枝を一定の長さで刈り込むこともある。
3.マツのコモ巻き
マツケムシはアカマツ、クロマツ、ツガ、ヒマラヤスギなどにつき、葉を食害する害虫で、暖かい間は幼虫が樹上にいるが、11月になると幹を伝わり下に降りて粗皮の下に隠れて越冬する習性がある。この性質を利用して幹の地上1.2mから1.5mの所にコモをゆるく巻き付けてシュロ縄で結束しておくと、越冬場所と間違えて入り込むので、年越し後にコモを取り外して破棄する。
また、金属のタワシなどでマツの粗皮をこすり取って潜伏場所をなくす事も有効。特にアカマツは赤い樹皮を美化するためにこの作業が欠かせない。
4.春花壇作り
10月は春花壇用のチューリップやクロッカスなどの秋植え球根の植え付け時期であるが、秋花壇が作ってある所ではこの作業が困難となる。この場合は、球根を小さめのポリポットに仮植えする。秋花壇が終わりの頃にポットから抜いて植え付ける。球根は1ポットに1球根で植える。
11月(東京平均気温13.0℃)
落葉樹は11月中に落葉し、春まで休眠に入る。この時期は移植の好期。
春の芽出しの時期まで、いつでもよいが、休眠に入ったばかりの11月と、3月の芽出しの直前が最も適期で、厳冬期の1〜2月は避ける。
<11月に植える事のできる樹木>
アカマツ、オオムラサキ、カイズカイブキ、キリシマツツジ、クロマツ、サツキ、ヒマラヤスギ、ウツギ、ウメ、ウメモドキ、オオデマリ、コデマリ、カイドウ、カエデ、コブシ、コナラ、ドウダンツツジ、ニシキギ、ハナズオウ、ボケ、ユキヤナギなど。
2.庭木の手入れ
①マツ類のもみ上げ
春のみどり摘みと秋から冬にかけて行うもみ上げが二大作業。もみ上げは速ければ9月から行うが、11月からが行いやすい時期。
秋の手入れは木バサミを使って込みすぎた枝を切り透かす作業と、残した枝の古葉を取る作業を一緒に行う。庭全体の木の姿を考えて整枝する。
一本の木については上部の枝は強く切ってもかまわないが、下枝は大切に残す事と、樹冠全体に日がまんべんなく当たるように透かす事が大切。
もみ上げは春のみどり摘みの時に一緒に行う事もある。
②ヒバ類の手入れ
イトヒバ、スイリュウヒバ、チャボヒバなどは和風庭園向きの庭木で手入れに手間がかかることから使われなくなった。これらの庭木は成長は遅いが、毎年手入れを行わないと枯れ上がっていく。
ヒバ類は、葉群を手のひらで挟んで軽くもみながら赤茶けた古葉を落とす。
その後、長く成長した葉と短い葉が残るので、長く伸びた小枝を切り取って短いものを残す。イトヒバ、スイリュウヒバなどは長く垂れすぎたものや立ち枝を切り取って枝垂れの形を整える。葉先を指でつまんでイチョウの葉のように整形する方法もある。全体にさっぱりとした形に仕上げる。
手間を省くために葉群を手でつまみ上げて木バサミで葉先をバッサリ切り込む事は厳禁。寒さで葉が赤茶けて見苦しくなってしまう。
3.庭木の種をまく時の注意
①種子の調整
種子は、果肉をつぶして水洗いする。イチョウなどはかぶれるので注意する。
小さな種子でも果肉をつけたまま蒔くと発芽を抑制する物質が含まれていて、容易には発芽しない。
②種子の貯蔵
ヒノキのように軽い種子は乾燥させて保存してもよいが、大型の種子は乾燥させないように砂を湿らせてその中で貯蔵し、春にまく。一方で、すぐにまくことを取りまきと言って、最も発芽率の高い方法になるが、庭木は草花類を違って発芽までに期間が長くかかるので気長に待つ事。
<11月にまくことができる樹木>
イチョウ、カエデ、クロガネモチ、シラカシ、センダン、チャ、トベラ、ツルウメモドキ、ムベ、モチノキなど。
4.冬挿しできる庭木
年末の挿し木の適期。針葉樹類は10〜11月、1〜2月によく活着するものがある。
<冬挿しのできる樹木>
キャラボク、ツガ、コウヤマキ、チャボヒバ、クジャクヒバ、サワラ、ヒムロ、ビャクシン、ゲッケイジュ、ツバキ、サツキなど。
5.病害虫の防除
落葉樹が葉を落としているので、害虫の卵やまゆを見つけやすい時期。
オビカレハの卵はウメの小枝を指輪のように取り巻いている。タケノホソクロバは、タケの葉に扁平で灰褐色のまゆをつけている。チャドクガはツバキの葉を裏返してみると卵がある。いずれも被害枝を取り処分する。ミノムシも丹念にとる。
6.庭木の防寒
①わら囲い
寒さに弱いソテツ、ヤシ類などはコモで木全体を覆い防寒する。
防寒は、幹にコモを巻いて保護する方法と、囲いを作って寒風に当たる事を防ぎ、地面にマルチングを行い地熱の低下を防ぐ方法がある。ユッカなどは葉先をまとめて、わらで縛っておくだけでも効果がある。
②雪折れの防止
青竹で骨組みを作りコモで保護したり、ヤツデ、カンチクなどは、わら縄で全体をぐるぐる巻きにして雪折れを防ぐ。
マツの枝は冬になると固くなり雪の重さで折れてしまうため、雪の多い地方では雪吊りを行う。雪吊りは幹に沿って丸太を立て、わら縄を頂上に一束にして結び、四方の各枝に振り分けて重みを支える方法をとる。東京では雪が少なくなり、費用もかさむのであまり行わなくなった。
7.冬・春花壇作り
パンジーやハボタンの苗が出回り始めるので、衰えた秋花壇から冬・春花壇に模様替えを行う。この時期にチューリップを植える場合は外皮を剥いで植える。
給水を早めることで発根も早まる。また、植え付け深さも二個分程度の浅植え(通常は球根3個分)にする。