芝生の効用

芝生とは、イネ科のシバ属などのシバ類によって地表面が絨毯状に覆われた状態を言う。
芝生は、土の単位面積の約10倍の葉面積があり、炭酸同化作用による酸素の供給に効果がある。また、柔らかな葉面は危険防止に役立ち、砂埃は裸地の6割から8割を防ぎ、泥はねを防ぐ。寒暑を和らげる働きもあり、夏の暑さは裸地に比べて5℃以上涼しくし、冬は平均で4℃温かくする。
このほか、赤土の防霜柱、法面の保護、土砂崩れの危険率を抑えるなどに役立つ。庭園においては、狭い庭園を広く見せる効果、清潔感、開放感などの演出など、和洋いずれの庭園にもよい。

シバの種類

和名でシバという場合は、一般的には園芸品のコウライシバやビロードシバなどを総称して使われる。
日本シバが暖地性で地下茎で増えるのに対して、西洋シバは寒地性で地下茎はなく種でふやす。

日本シバとその種類

夏芝と言われ、春から秋にかけて緑色を保ち、種類が多く、いろいろな名称がつけられているが、実物を見ないと区別しにくい。

1)ノシバとその特徴
全国の海岸沿いに多く自生している。丈夫で生育がよく、大公園、運動場、飛行場などで多く用いられている。住宅庭園では見栄えが悪いのであまり使用されない。栽培品よりも野生品を使うことが多い。
大芝、野生芝、鬼芝、犬芝、地芝、山芝、大仙芝などの名称で呼ばれている。

2)コウライシバとその特徴
ノシバよりやや弱い。栽培品の多くはヒメコウライシバで、関東ローム層の赤土地帯が生産地として最適。ゴルフ場、住宅庭園向き。
ノシバを大芝とし、コウライシバを中芝、小芝として区別している。
東京芝、江戸芝、関東芝、朝鮮芝などとも呼ばれている。

3)ビロードシバとその特徴
分類学上ではコウライシバとも呼ばれている。
最も小型で弱く、暖地向き。鉢物としてよく鑑賞されている。
細芝、姫芝、絹芝、糸芝、朝鮮芝などとも呼ばれている。

4)ギョウギシバとその特徴
日本にも自生種があり、根茎でよくふえるので日本芝に入れているが、芝生としては西洋芝。葉が繊細で成長も速いが、除草剤や病害虫に弱い。
一般にはバミューダグラスと呼ばれているが商品名のティフトン芝のほうが有名。

西洋シバとその種類

日本芝を夏芝とも言うのに対して西洋芝は冬季でも緑を保つものが多いところから冬芝ともいう。
主に種から育て、各種を混合してまく方法が一般的。
牧草の一種なので、刈り込み回数が多くなり管理の手間がかかる。
種類は四大別され、多くは英名で呼ばれている。

1)ベントグラス系
日本に野生しているヌカボ属の仲間。
ゴルフ場のグリーンによく用いられており、コロニアルベント、クリーピングベント、ベルベットベント、レッドトップ、シーサイドベントなどの種類がある。

2)ブルーグラス系
雑草としていたるところに自生しているスズメノカタビラの仲間で、イチゴツナギ属の多年草。ケンタッキーブルーグラス、カナダブルーグラス、ラフブルーグラスなどがある。

3)フェスク系
ウシノケグサ属の仲間で、比較的大型になる種類が多く、芝生としてはあまりふさわしくない。トールフェスク、メドウフェスク、レッドフェスクなどがある。

4)ライグラス系
ホソムギ属の仲間で日本には自生がない。成長が速いために、一時的な芝生として混用されている。ペレニアルライグラス、イタリアンライグラス、ドメスティックライグラスなどがある。

シバの育て方と張り方

シバの生育環境

シバは日照を好む植物で、排水の良い、一日中よく日が当たり通風もよい所が最適な環境。日照は一日五時間は必要で、とくに午前中の日照がよいとされる。
西日は光線が強く、空気も乾燥するので好ましくない。排水が悪い土地ではうまく育たない。根は、地下30〜60cmまで伸びるので、地下水位の高い地域も適さない。こういった土地では客土するか、排水設備を考える必要がある。
土のpHは弱酸性がよく、日本シバではpH6.5(5.5〜7.0)、西洋シバのフェスク系やベントグラス系は5.4〜7.6で、ライグラス系とブルーグラス系では5.5〜8.3と弱アルカリ性でもよく順応性がある。
土中の有機物含有量は5〜20%が効果的。

シバの張り方

1)苗の購入と芝坪
各地方により呼称や単位に多少の違いはあるがシバの苗は昔から坪単位で売買されている。いわゆる面積の単位よりも縮小されたもので、芝坪と呼ぶ。
並坪は長さ38cm、幅15cmのものが40枚で1坪とされ、約2.3㎡相当。
本坪は長さ45cm、幅30cmのものが24枚で1坪とされ、約3.3㎡相当。
こうしたことを計算にいれて購入する必要がある。
苗は雑草根がなく、病害虫に侵されていない均一な厚さのものを購入する。

2)整地
生育に適さない土地の場合には客土、土壌改良剤などの施しが必要となる。
通常は、15cmの深さによく耕し、元肥として1㎡当たり油かす200g、堆肥など500gを施し、よくすき込み、小石や雑草なども取り除く。さらに、
ふるい(1.5cm目)で石やゴミを除去しレーキで表面を平にならし、ならし板を使って凸凹をなくす。

3)芝張り
最適期は4月。9月にも可能であるが張り方、目地の塞がり方も違う。
4月植えは目地幅を3cmで張れば9月には隙間がふさがり完成するが、9月植えは目地幅をさらに詰めて張る必要がある。
深植えにすると不定根が発生しにくくなるので、浅植えにする。
美しく整然と張るために、縄張りを行う。縄は建物や花壇などにそって張る。
苗を一通り張りつけたところで、凸凹がないように、たたき板で平均に均し、目土を入れる。苗を張り付けた時にできるすき間に入れる土で、根つきを良くするために行う。目土は広い面積に芝張りを行う場合には、あらかじめ用意しておく。なお、目土は苗と目地の高さが同じになるように入れる。
張り終わったら、充分に散水する。
その後は、根がよく張るまでは中に踏み入らない。強風や晴天続きの時には灌水を行う。
目地から雑草が発生するので、苗の上に板を敷きその上に足をのせて早めに抜き取る。

4)芝張りの各種方法
①平張り
ベタ張りなどとも言われる方法で、まったく目地を取らない張り方。多量の苗が必要となり、即席に美しくしたい場合や、秋口の芝張りに向く。
②目地張りと半切れ張り
最も一般的な方法。縦と横に目地をつけ、目地を3〜7cmにすると、芝坪1坪分で約3.3㎡(1坪)に相当する。この時に一枚の苗を半分に切って一枚として張りつける方法が半切れ張りで、手間がかかるが、早く完成させることができる。一般的には1〜3ヶ月で完成する。
③互の目張り
横目地は普通に取り、縦目地は苗の半分の長さに取る張り方。春植え向きで、完成までに多少の時間がかかる。
④市松張り
市松模様に張る方法で、苗が少なくて済む。完成までに6ヶ月、場合によっては一年はかかる。
⑤筋(条)張り
一列に目地張りを行うが、列と列の間をかなり長目地に取る方法。完成までに1〜2年かかる。
⑥植え芝法
一枚の苗を約10cm程度に切り離して植える方法。使用量にもよるが、ティフトン芝で約2〜3ヶ月、コウライシバで5〜6ヶ月で完成する。

傾斜地にシバを張る場合には平張りや筋張りが適しており、崩れ防止として芝ぐしで挿し止める。
芝ぐしは、赤土(火山灰土、関東ローム層)の地域で秋に芝張りを行う場合にも行う必要がある。

種からの育て方

日本シバが苗を張って作るのに対して、西洋シバは種から育てる。
西洋シバは何年も保たないので、2〜3年ごとに種をまいて更新をはかる。種をまく場所は日本シバを張るときと同じようによく整地しておくが、西洋シバは根が深く入るので、排水をよりよくしておく必要がある。
元肥は日本シバよりやや多めで、1㎡当たり堆肥1kg、魚粉200gとし、アルカリ性を好むので、1㎡当たり50gの消石灰で土壌の中性化をはかる。
種まきの時期は9月が適期。寒地では春まきにし、まく種の量は1㎡あたり20〜40gが標準的。
発芽が悪いようであれば、二度まきを行い調整を行う。まき方は、やや薄めにまいて、後の生育を良くする。
砂や草木灰、おがくずなどを種と一緒に混ぜてまくと平均的にまくことができる。全量を一度にまかず、二度まきように予備を残しておくことがポイント。
作業は、無風曇天の日がよく、地表面はレーキで軽く筋をつけておく。なお、灌水は種をまく前に行う。
覆土の必要はなく、軽くローラー転圧か、たたき板で圧する程度でよい。
種で育てる方法は、日本シバの上から西洋シバの種をまきつけることで、冬でも緑の芝生が楽しめることにも有効で、まきつける種類としては発芽力が良く、耐病性の強いレッドトップ、イタリアンライグラス、シーサイドベントなどが向く。まき量は1㎡当たり10〜40gが適量。

芝生の管理方法

芝刈り作業

1)日本シバの芝刈り
放任しておくと20cm丈に伸び、むれて枯れてしまう。また、刈り込みすぎると栄養源が作れなくなり弱る原因にもなる。
シバは種類や利用目的、生育期などにより、刈り込み方や回数が違ってくる。
刈り込みは、たえず東西、南北と向きを変えながら刈り、生育の良い時期は短めに、生育の鈍い時期は長めにかるように加減する。また、雨後や朝霧のある時には行わない。刈りくずは芝生に残さないよう処分する。
コウライシバの標準刈り込み回数は、5月・1回、6月・2回、7月・3回、8月・4回、9月・2回、10月・1回、11月・1回の年計14回で、刈り込みの高さは20mm。
伸びすぎた場合は、一度に短く刈り込むのではなく、順次短く刈り込む。
急激な短葉化はシバを弱らせることになる。
作業は、芝刈りバサミ、芝刈り機(ローンモア)を使用する。

2)西洋シバの芝刈り
西洋シバは芝葉が柔らかく刈りやすい。
西洋シバの刈り込み回数は、3月・2回、4〜6月・4〜5回、7〜8月・2回、9〜11月・4〜5回、1〜2月・2回の年計16回で、春は一時的に伸ばしてから、発芽後10cm丈になったものを5cmに、次に8cm丈を5cmに、次に6cm丈を4cmに順次刈り込んでゆき、最終的には2〜3cm丈にする。

目土入れ

1)日本シバの目土入れ
芝生面を平均するために、刈り込み後に年1〜2回行う。
目土は、ふるい(1.5cm目)にかけた土を用い、土に1/2量の山砂を混ぜて施す。あまり厚くかけると逆効果になるので、0.5cm厚(1㎡当たり3〜5ℓ)で均一に施す。この時期に、追肥として化成肥料を1㎡当たり20〜30g、目土10に対して消石灰・0.5、殺菌剤・ごく少量、土壌改良剤・0.5などを生育に応じて施す。
目土入れは6〜8月の生育の盛んな時期に1回と、3月か10月に行う。

2)西洋シバの目土入れ
9月〜10月にかけて行う。
目土は1cm目のふるいにかけたものを用い、厚さは3〜6mm程度に施す。
あまり厚くかけると逆効果になる。
目土入れと同時に追肥も施す。

鎮圧

芝生を踏みつけることで成長を促す。
足で鎮圧するかわりに、たたき板で行うことも可能で、広い面積の場合にはローラーをかける。
新芽の発生時期の4月は避ける。

施肥と灌水

1)日本シバの施肥と灌水
施肥は欠かせない。遅効性肥料を主体に、一度に多量に施さず、ごく少量を多数回施す。水は一度に大量に、肥料は一度に少量ずつが原則。
施肥は4月〜5月と、9月に各1回行い、春の施肥を重点に、1㎡あたり、チッ素15〜30g、リン酸10〜25g、カリ分10〜25gを施す。
消石灰や草木灰は茎を丈夫にするため多少多めに施す。チッ素分が多すぎると茎葉が柔らかくなり、病害虫に弱くなる。
生育状況に応じて、秋から冬は有機質の肥料を、春から秋は即効性の草木灰などを追肥する。目土入れに混ぜて行う方法もある。
砂質地では保肥力が悪いため黄化現象を起こしやすいので多少多めに施す。
灌水は日中を避け、朝か夕方に行う。雨の多い月は不要。
芝生に水たまりができるようでは土の排水を考える必要がある。

2)西洋シバの施肥と灌水
施肥は、生育期間中の3〜10月にかけて3〜4回行い、1㎡当たり化成肥料20〜30gを水1ℓに溶かし、水肥にして施す。
夏季はチッ素分をごく少量にした方が丈夫に育つ。
灌水は日本シバより多めに行うが、湿気に弱いので注意する。
ベントグラスの場合は1日1回当たり、3.3㎡に30ℓが目安。

更新と穴開け

芝生は踏み固められると雨水や空気が入らなくなりその部分が枯れるため、適当な穴開けを行う。
穴は鉛筆大の太さで、10cmの深さに10cm間隔に開ける。
3〜4月が適期で、ローンスパイクやバージレーキ、ホークなどで行う。
枯れ死した部分は補植して更新をはかる。枯れ死した部分よりやや大きめに切り取り新しい苗を植え付ける。
古く(約20年)なった芝生は全体に弱るので更新する。全面的に張り替えるか、または、全体の表面を削り取って3cm厚に肥えた土を敷いておくと下から新しい芽が発生する。
西洋シバも日本シバと同様に穴開けを行うが、時期は9〜10月に行う。
枯れ死した部分については種をまき足して再生をはかる。

主な病気とその防除

日本シバは病害にはかなり強いが、低温の年や湿度が高い、あるいは肥料過多、日照不足などが原因で、5月〜7月、秋に、さび病が発生しやすい。
西洋シバは日本シバより病害に弱く、ブラウンパッチ、春はげ(しずみ)病、斑点性病害としてピンクパッチ、ダラースポット、コパースポット、スノーモールドなどが発生する。

1)さび病
コウライシバに多発する病害で、葉面全体が黄だいだい色になる。発生時期は5〜7月、秋の9〜10月。早期発見に努め、イオウフロブル、ラリー水和剤などの薬剤を7〜10日おきに散布する。さび病の病菌は雑草のヘクソカズラが中間寄主なので近くにあれば除去する。

2)ブラウンパッチ(紋枯れ病)
西洋シバに多く発生する。湿度が高く(75%以上)、気温が高く(20℃以上)なる6〜9月に発生する。土中の病菌が原因なので、チッ素肥料を少なくし、土壌をアルカリ性にする。排水、通風を良くする。
オーソサイド水和剤の80倍液、ベンレート水和剤などを散布する。

3)春はげ病
コウライシバやティフトンシバに多く、春先に発生する。芝生面が径15〜30cmの不規則な円形にかたどられ、その部分は発芽しなくなる。
短く刈り込みすぎたり、目土を多く入れすぎると多発しやすいので、グラステン水和剤などの薬剤で予防する。8月下旬〜11月にかけて2回、3月に1〜2回の散布を行う。

主な病害虫の防除

1)コガネムシ
種類が多く、幼虫、成虫ともに根茎を食害して枯れ死させる。
薬剤散布は卵がふ化し始める7月頃が適期で、カルホス乳剤、スミチオン乳剤などの殺虫剤を散布する。

2)ヨトウムシ(シバヨトウ)
種類が多く、幼虫をネキリムシという。5〜6月と9〜10月の年2回発生する。夜間に現れ害を与えるのでこの名がついた。
コガネムシと同様の薬剤を散布する。

3)シバヤトガ、チガヤシロオカイガラムシ
アメリカから輸入したティフトンシバの根に入っていた。近年、コウライシバやノシバに被害が多発している。
年3回発生し、ふ化直後のみ、カルホス乳剤、スミチオン乳剤などの殺虫剤が有効。
チガヤシロオカイガラムシは現在、沖縄県だけに発生している。

除草と除草剤

1)手で抜く除草
手抜きによる除草が最適であるが、面積が広い場合には除草剤が使用されている。雑草は夏季に成長が早くこまめに抜き取りが必要。

2)除草剤と使用方法
除草剤にはホルモン型(移行性)と、非ホルモン型(非移行性)がある。また、土壌処理剤として雑草の発芽前に散布するものと、茎葉処理剤として発芽後に散布するものがある。
イネ科雑草に効果のあるもの、広葉雑草に効果のあるもの、両者に効果のあるものなど効き方が様々なので目的に応じて使い分ける。