家庭花壇の考え方・楽しみ方

家庭の庭に草花を植える場合、庭の一角を区切ってブロックなどで囲い、フラワー・ベッド式の花壇を設ける方式があるが、33㎡(10坪)以下の狭い庭ではこの花壇が後々邪魔になって困ることがある。花壇を設けると、年間を通して何か草花を咲かせて飾らないと美観上も思わしくない。したがって、草花は花壇に植えるものという先入観を持たないことも大切。
1.敷地全体を花壇と考える
敷地内に家屋があり、庭木もあり、草花もあると考えれば特別に花壇を設けなくても敷地内の土のある所であれば草木を植え、飾ることができる。
敷地全体を一つの花園と考えて草木を植えて多くの種類を楽しむ考え方もある。

2.草花の種類と植え場所
最初の数年間はいろいろな種類を植えてみて、その中から最もその庭でよく育つ適したものを選ぶ。
草花と日照の関係をよく知ることが大切で、総体的には一年草類と球根草花類はほとんどが日向性であることで、多年草類の多くも日向を好むが、日陰性のものには多年草類が多い。
日向性のものはなるべく日当りの良い所に(少なくても半日以上)、日陰性のものは陰地に植えること。敷地内の日当り具合を調べておく。

3.敷地内における草花の配植の方法
草花の種類、品種の形質に合わせて、同一種を小集落状に植えると効果的。
縁取り向きの種類では家屋の南側の日当り地に沿って家屋の外側を飾るように植えたり、ごく小型の草花では通路の縁取りとするほか、飛石(踏石)の間や角に数株を植えるとよいアクセサリーとなる。春にはクロッカス、チオノドクサ、シラー・シビリカなどの小型球根類、ビオラやスイート・アリッサム、クリサンセマム・ムルチコーレ、ヒメハナビシソウなどの小型秋まき草花、アルメリアやシバザクラのような小型宿根草が、夏には一年草ではマツバボタンやヒメマリーゴールド、宿根草のバーベナ・テネラやペルビアナなどが似合う。
テラスの周囲も中〜小型の草花で囲むと美しく、池の縁にもこれらの小型草花のほか、日当りさえ良ければハナショウブやアヤメなどもよく似合う。
庭石の裾には、わい性宿根ナデシコ(ライオン・ロックやデルトイデスなど)、黄花宿根アリッサム、オダマキ、セダム類(マンネングサ類)、スイート・アリッサム、ビオラなどはよく似合う。
芝生中にはクロッカスやスノードロップ、チオノドクサなどの小型秋植え球根を数株づつ植え込んでおくと、早春、まだシバの緑が出ない前に枯れ芝中に花が咲きだし春を告げる。四季咲きのベゴニアなどを植えれば、春から秋まで咲き通して楽しめる。
これらの小型球根類は花壇に植えるよりもこういう扱いの方が効果的。
また、芝生の一角で半日以上日が当たる場所であれば、カンナ、ハゲイトウなどの大型草花の集落をつくるのもよい。中〜小型種では、サルビアを植えると赤い花が緑の芝生に映えて美しい。

パーゴラ、アーチ、フェンスなどにはつる性の草花を利用する。
アサガオ、ヨルガオ、ルコウソウなどのほか、窓の日除けに軒先からひもを張って絡ませる日除け作りもよい。
アサガオではなく、観葉葉菜のツルムラサキをからませても面白い。
つる性の草花は立体的に利用するのに最適な草花。
池があればスイレンなどの水生植物を入れるが、スイレンは日照不足だと花つきが悪くなる。
池の辺りにはカキツバタ、オランダカイウなどの水湿地性の草花が適している。
家屋の北側や、庭木の下など日の当たらない場所では、一年草類や球根草花類多くは花を付けないことが多いため花もの類を植えることは少なくなるが、日陰地でも花をつけるインパチエンス(アフリカホウセンカ)、シャガ、シュウカイドウ、ユキノシタなどの種類があるので配植する。
生垣や万年塀のすそなどに土が露出する場所で、南側の日当りの所にマツバボタンやスイート・アリッサムなどの小型の草花を、あるいは、植え放して夏いっぱい咲き続けるタマスダレなどもすそ飾りとしてすばらしい草花になる。
石垣のある場合は、石垣の上にシバザクラや暖地であればマツバギクなどを植えておくと茂りだした株は枝が石垣から垂れ下がり美観となる。オダマキなどは石垣上に植えておくと種がこぼれ落ち石垣の間から芽生えて育ちやがて紫の花を咲かせて美観となる。

花壇の様式と扱い方

1.花壇の形
花壇を設ける位置によって周囲との映りが最もよい形を考える。
円形花壇は周囲から見る花壇であり、日照の多い、かなり広い面積の庭に適した花壇で、狭い庭には向かない。正方形や多角形花壇も同様。
花壇は庭の中央に設けず、家屋に接して、あるいは庭の片側に寄せて設ける。

2.花壇の面積
家庭花壇では大面積の必要はなく、むしろ小面積の花壇を生かす。
3.3㎡(畳二枚以下)の面積で充分であり、広く取りすぎると手入れに手間がかかり維持しきれなくなる。

3.周年花を絶やさないための花壇作り
花壇に花が絶えるとひときわ目立ってよくない。
花が終わったものはすぐに抜いて片付け、接ぎのものを植える。
手間と費用を節約するには、一度植えると長期間咲き続ける四季咲きベゴニアやペチュニアなどを選ぶ。
花壇の主体は花が終わったらすぐに抜き捨てられる一年草類を用いる。
宿根草類は、花は美しいが、花が終わっても株が残るため花期以外は寂しくなるため、花壇には植えず、敷地内の適所に集落状に植えるほうが向いている。
球根類は多年生植物であるが、花後に居残っても球根部は地下にあり、深めに植えておくことで休眠期間中はその上に一年草類を植えることができ、宿根草よりも処理しやすい。

花を絶やさないローテーションとして
10月:チューリップの球根を植える
11〜2月:ハボタンを植える
2〜3月:ハボタンを抜きパンジーを植える
4月:チューリップが咲く
5月:5月末までパンジーが咲き続ける、チューリップの跡へグラジオラスを植える。
6月:グラジオラスの間にサルビアを植える

7月:グラジオラスの花時
8〜9月:サルビアが茂りだす
10〜11月:グラジオラスを掘り取ると霜が降りるまでサルビアが咲く

組み合わせる種類は、必ずしもこの通りでなくてもよく、同じような性質のものであれば他の種類を組み合わせてもよい。

花壇の土作り

1.土作りの方法
植え場所を決めたら、酸性壌土の中性化をはかるため園芸用石灰(苦土石灰、消石灰など)を3.3㎡当たりコップ23杯まき、土の耕起を行い、土を柔らかくする。草花類には強酸性土をきらうものが多いので、年に1回は花壇の空く時を見計らい、石灰による中和を行う。
石灰施用後、7〜10日たったら堆肥類(堆肥、腐葉土、ピートモス、乾燥牛ふんなど)を厚さ1〜3cmに敷き、更にこの上に醗酵乾燥鶏ふんを薄くまいて、再びスコップでよく耕してならす。

 

花壇草花の植え方

一般的に、草丈の低いものは狭く、高くなるに従って広く植えるが、草丈の高いものでも枝打ちをしないで1本で直立するものは、かなり狭く植えることができる。グラジオラス、チューリップなどの球根類に多く、ラークスパーなどの一年草にもまれにある。低いものでもバーベナのように枝が地を這うように茂ったり、横張りするものは間隔をとる。

草丈による植え付け間隔の目安
・15cm以下のわい性種:10〜12cm
・20〜40cmの中性種:15〜20cm
・50〜80cmの高性種:25〜35cm
・それ以上のもの:40〜60cm
群植して早く美しく見たい時には標準よりやや詰め気味に植えても良い。
混植のローテーション形式などでは、標準より広めに植える。
球根類の中球型のものは間隔は1〜2球抜き、深さは厚みの二倍が標準。
ダリアやカンナなどのような大型種は40〜80cm間隔が必要。
植え位置は、縦横そろえて植えるが、千鳥植えにした方が早くびっしりと埋まる。
品種によって草丈が異なるものを組み合わせる場合は、手前側に低いもの、奥になるにしたがって高いものを植える。周囲から見る円形花壇などは、中心を高くし、周囲になるにしたがい低いものを植える。このほか、同一の高さで草丈の低い種を植えることを毛せん花壇という。
植え付け後に充分灌水を行えばあとはよほどの日照りがない限り灌水の必要はない。

花色の組み合わせ方

各種の花色のものを植える時には、各色をそろえて組み合わせた方が美しく見える。
色の組み合わせ方は、濃色—淡色—濃色、暗色—明色—暗色といった色感の異なるものを互いに組み合わせることが原則。
また、あらゆる色に対して組み合わせることができる色は白色であることを覚えておく。白色はあらゆる色を引き立たせるのに最も効果的な色。

花壇の縁取り

花壇の区画を区切って縁取りすると庭のアクセサリーとして効果的。
コンクリートブロックよりは赤煉瓦で囲ったほうがより落ち着いて見える。
このほか、玉石、空き瓶を逆さに埋め込むなど種々あるが、縁取りとしてあまり目立つものは避ける。さりげなく花壇の草花を生かしてくれるような縁取りであることが理想的。
縁取りに植物を用いる方法もあり、極めて自然風に縁取られ違和感がない。
これには、丈が低く、びっしりと茂るものがよく、花時以外でも葉が見られるものが適しており、草花ではシバザクラ、葉ものではリボングラス、クサツゲなどが良い材料になる。